長崎地方裁判所佐世保支部 昭和42年(ワ)108号 判決 1968年10月01日
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
(当事者双方の申立)
原告 「被告は原告に対し、金五六二、〇〇〇円およびこれに対する昭和三九年五月六日から完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする」との判決並びに仮執行の宣言
被告 主文第一、二項同旨の判決
(原告の請求原因)
一 原告は、建設機械の賃貸並びに土地造成工事施行を業とする商人である。
二 原告は被告に対し、シヨベルドーザ一台を賃貸料一時間につき三、〇〇〇円、料金は二五日締切り翌月五日原告方において支払うとの約定のもとに、昭和三九年三月二六日から同四月二五日までの間、長崎県東彼杵郡の彼杵川および田島川各災害復旧工事のため合計二二六時間賃貸した。
三 しかるに被告は、右賃貸料六七八、〇〇〇円と機械運搬料二六、〇〇〇円の合計七〇四、〇〇〇円のうち一四二、〇〇〇円の支払をしたのみで、残額五六二、〇〇〇円の支払をしない。
四 よつて、右残金とこれに対する最終支払期日の翌日たる昭和三九年五月六日から完済に至るまで、商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告の答弁)
一 請求原因一項の事実は認めるが、同二項の事実は否認し、同三項の事実は知らない。
二 原告主張の彼杵川および田島川の災害復旧工事は、被告が長崎県から工事を請負い、これを訴外堤清、同植木孟、同林田一の三名に工事地域、工事量等を区分して下請負させた。そして各下請負人は各自責任をもつて工事地域の工事を施行し、建設機械の選択、トラツク、バスの使用、燃料や人夫賃の支払等はすべて各下請負人の責任と計算においてなされるのである。本件シヨベルドーザは被告の下請負人である訴外堤清が原告から賃借したものであるから、右訴外人に対して請求すべきであり、被告に支払義務はない。
(原告の予備的主張)
仮に堤清が被告の従業員でなく下請人であつたとしても、被告は長崎県より請負つた彼杵川および田島川災害復旧工事に関し、堤に「平山組堤班」なる名称の使用を許し、右の名称で土木事業に関する取引(油、材料の購入、機械の賃借等)をすることを許容し、注文者たる県に対しても堤が被告の従業員である旨表示していたものである。右事情から、原告としてはシヨベルドーザの借主が被告であると信じてこれを賃貸したのであり、被告は商法第二三条により本件賃貸料の支払義務がある。
(被告の抗弁)
仮に被告において本件賃貸料の支払義務があるとしても、本件債権は民法第一七四条第五号の「動産ノ損料」に該当するから、一年の時効期間の経過により昭和四〇年四月二七日消滅した。よつて被告に支払義務はない。
(右抗弁に対する原告の答弁)
被告の右抗弁は争う。シヨベルドーザの賃貸料は動産の損料にあたらない。
(立証)(省略)